意図的に自分の中に枠組みを作ることで学びの質を上げる

概要

「ハンマーしか持っていなければすべてが釘のように見える」のような言葉もあるが、認知科学的には、人は持っている知識を使って新しい知識を獲得する。 しかし、それは何を考えているかによって、同じものをみても得られるものが異なるということである。

うどん屋を見ても、経営者であれば「この店はこんな安く提供して、どうやって利益をだしているんだろうか」と考え、 他店のうどん屋の店主であれば、その店のうどんのだしと麺について考え、 観光客であれば、観光地として行く価値がどれくらいあるかということを考えるであろう。

心理学で言われる、「カラーバス効果」も近いものであろうか。

そこで、今回は意図的に自分のインプットを変えるための方法と、そのリスクについて検討する。

内容

何をするか

自分が実施して効果のあったものを事例と共にお伝えする。

アウトプットを事前に行う

自分が過去の経験で効果が高かったのは、アウトプットを事前に行うことである。 例えば、自分のやっている/やることに近いカンファレンスがあるときには事前にアウトプットを繰り返した。 ブログに書くこともそうだし、ワークショップを設計することもそう、人に物事を説明することもある。 これらを事前にすることで、インプットを事前アウトプットとつなげることが自然にできるようになる。

これは、すぐに仕事に役に立ったし、仕事でのアウトプットが一気に良いものに変更されたように感じる。

手軽にやるためには、カンファレンスの休憩時間中にアウトプット繰り返してみても良いのではないかと思う。 自分は、時間があるときにはそういったことやっている。 何度も継続しているほどの思考を変えることはできないかもしれないが、聴講の直前までやっていたということの影響か、効果が大きかったように思う。

意識を向ける

インプットを行うときに、全ての情報をできるだけ多く取得するのではなく、 インプットを行っているときにも一定のリソースを「XXXにつかえることはないだろうか」と思考を向けることが簡単に欲しい情報を取得できるようになる方法である。

しかし、事前にアウトプットをしていた状態は自然に意識が向いている状態といえるのに対して、こちらの方法は意図的に意識を向けている状態だと言える。 自転車や車の運転でもそうだが、無意識にしていることよりも意識的にしていることの方がリソースを使う。 疲れる割に得られるものが少なくなってしまう。

これは、事前に大きな準備をしなくてもその時間だけ意識を向けることで、自分に役立つことを得られるようになるというメリットがある。インプットをする機会までに時間が足りない場合などは活用してみてほしい。

自分は、シン・ゴジラの映画を見るときに、ワークショップの題材として使うとしたら、どんな教材にすることができるだろうという問いを持って映画をみていた。これによって多くのアイデアを得ることができた。 しかし、無理やり実験的に立てた問なので、その後に活用できたアイデアは少なかったようにおもう。

方法ごとの特徴

もちろん、何かにフォーカスしてインプットをするわけなので、フォーカスしている部分とは非常にマッチングしやすい。 しかし、広く得ようとしていたときには得られていた情報を取り逃してしまうことにもなってしまう。

メタファーとして、掃除機の吸込口を考えてもらえば分かりやすいのではないだろうか。 掃除機の吸込口は、先は細くなっている吸込口と、広く床と接することができる吸込口がある。 前者は、強い吸引力を発揮するが、狭い範囲しか吸い込むことができない。 後者は、弱い吸引力しか発揮できないが、広い範囲を一気に吸い込むことができる。

インプットをするときに、細い吸込口でインプットをするということは、本であれば時間が非常に多くかかることになるし、 講演であれば狙っていた部分以外を多く取り逃してしまうことになるのではないだろうか。 これを考えると、細い吸込口はフォーカスする分、落としてしまう情報も多いが、自分の気になりごとは強くひきつけて得られると考える。

インプットをするときに、広い吸込口でインプットするということは、多くの範囲を薄く拾えるが重い物や床にくっついているものは、拾いづらい。 講演であれば、本人の言葉をそのままはなせるようになるとしても、意味がよくわからないまま話せるようになったり、 同じ事話したとしても質問されたときに答えられなくなるのではないかと思う。 しかし、その時すぐに使えなくても、後から話していたことの理由に気がつけるかもしれない。 質問されて答えられなかった経験が今後に活きてくることも考えられる。