学習のスコアリングについて考えたこと

概要

効率的な学習へ導くためのスコアリングについて考えた。 スコアや指標を作ることで、人はそのスコアに対して目標を持ち、基準を達成するために問題に取り組む。 しかし、スコアリングの方法を間違えると、学習者の能力が正しく測定できないだけではなく、 学習者の努力が間違えた方向に進んでしまう。 そのため、今回は、学習者に対して本質的な学習を支援するためのスコアリング手法、スキルシート型評価指標の提案を行う。

現状の教育に関する指標について

現状の教育における生徒を評価する指標は大きく分けて、加算式と比率式がある。 加算式は、RPGの経験値のように減ることは無く常に加算されるものである。 教育の場では、宿題をやってきた量を評価するなどで利用している。 比率式では、ボードゲームの強さを測るレーティングのように相対的な位置を知るために測定毎に上下するものである。 教育の場では、定期試験、入学試験など実力を測るところで利用している。 また、現在では比率式での評価が主に使われているが、これも設定を間違えると他の大きな問題につながる。 それを、ジェネラリスト思考偏重と、正確性偏重の問題として述べる。

加算式の問題

教育現場では、結果だけではなく努力に対しても評価をする方針も多々見られる。 しかし、努力をしていることの評価方法を間違えると、生徒は努力をしているように 見せかけることに注力してしまう。

具体的には、自主学習時に利用したノートを提出すると、分量に応じたスコアを付与するものを考える。

この問題では、加算式では、工夫をしなければやればやるほどスコアが伸びるという特性があることから、 スコアを稼ぎのための作業をすることが目的になってしまい、ひたすら何も考えずにノートを作成するという 場面を創出してしまう。

これに対する対策としては、一定の点数までしか評価しないことや、分量が増えるに応じて単位量あたりの 加算量を下げる方法を見る。しかし、根本的に、スコア稼ぎの作業をしてしまうことに対する根本的な 対策にはなっていない。

定期的な比率式スコアリングの問題点

定期的な比率式スコアリングでは、知識が積み上げられていて難度の高い問題を問いているにもかかわらず、 点数としては同じ100点満点なので、結果に対して変化が分かりづらくモチベーションの維持に影響する。

また、スコアリングを1次元の情報に圧縮して、得意部分や苦手部分に気付きづらくしているテストがあることも 問題である。具体的には、英語のスキルに関しても、リスニング、リーディング、ライティングとあるのに、 合計した点数だけ提示されることで自発的に分析しない人には、点数が上った下がったなどの 安易な結論のみ印象付けてしまう。

他にも、一定期間毎に試験があると、試験のスパンに対して最適化して学習を進めることになり、 どんどん先に進むことができる生徒も試験対策のために足止めされてしまう。

ジェネラリスト思考偏重の問題

社会に出ると、得意なものを活かしたスペシャリストとしての能力を認められる場面がある。 しかし、学生時代に関しては、苦手分野を無くすことに一定の価値を置かれている。

具体的な場面としては、1教科100点のテストを5科目に関して課すことを想定する。 得意科目の理系に関して100点、苦手科目に50点しか取れていない生徒に関しては、 得意科目では、点数を上げることができないため、苦手科目を克服することに注力させる。

この問題による影響は、得意科目に取り組むよりも多くの時間を苦手科目に費やしてしまうことである。 また、他にメンタル面では、苦手なものや、嫌いなものに対して頑張るスキルは身についているが、 得意なものをより磨くことや、他の人よりも得意なものを作ることができなくなってしまう。

この問題の対策として見るのは、5教科中上位の3教科の点数を重視/評価することである。 これにより、苦手科目に対して対策しすぎず、得意科目を伸ばすことに注力できる。

正確性偏重の問題

社会に出ると、正確性よりも早く一定の品質を求められる場合もある。 しかし、学生時代に関しては、早く一定の品質のものを生産するよりも、正確な作業をすることに一定の価値を置かれている。

具体的な場面としては、1つ100点満点のテストで、90点以上の生徒は重要な所は全て抑えているにも関わらず、 100点を目指して必要以上に正確にミスが無いことを求める。

これは、本質的な科目の学習だけではなく、正確性に対して注力させることになり、 本質的な学習からの意識を遠ざけてしまっている。

この問題の対策として見るのは、100点分しか科目の点数が存在しないのではなく、 200点分の問題があり100点打ち切りのテストである。一定レベル以上に達した 学生に対して細かく優劣を付けないことで、不要な労力を避くことを防いでいる。

対策

これらを踏まえて、比率式を用いた単元ごとの能力の判定と、単元ごとの能力の加算式の混成型指標である スキルシート型評価指標を提案する。 イメージとしては、資格を沢山保有しているようなものである。 具体的には、試験を受けた点数から、本質的な問題のどれくらいできているかを計測し、合否や階級を設定する。 単元毎に認定を付けることで、学習する毎に保有認定数が増加することで、努力が見える化する。 また、認定が増加していくことで、自分のレベルアップを実感しやすい。

まとめ

現状の教育現場でのスコアリングについて加算式と比率式に分割しての問題点について分析した。 生徒が本質的な問題に注力し、努力を見える化することで正しい方向に導くスキルシート型評価指標を提案した。 今後、自分の学習システムに取り入れたい。