前向きな学びを取り入れるための講義の問い

概要

教育心理学的に、教師が講義形式で一方的に教えるよりも、学習者に問いを考えてもらう方が学習効率が上がると言われている。 そのため、資本論を題材にワークの問いを考えて整理した過程を紹介する。

  • 持ち帰って欲しいことを決める
  • 問いの分類をする
  • 問いを作る
  • 問いから考えることを検証する
  • 問いの時間とセッション時間から使用する問いを選択する

内容

持ち帰って欲しいことを決める

今回は、持ち帰って欲しいことを2点用意した。 1つは、資本主義の仕組みを活かして、自分が労働者として働く上で何を変えるともっと上手くいくようになるか。 もう1つは、マルクスの主張である資本主義経済の格差について知ってもらう。

自分が伝えたいことは、1つめである。 しかし、今回は集客に資本論をテーマにすると伝えたため、参加者の人が資本論を勉強したといえるよう、 マルクスの主張も持ち帰ってもらうものに追加した。

問いの分類をする

どんな問いがあれば、目的を達成できるか、目的の質を高められるかを考える。 いきなり、目的とする問いを出しても、難しいと思う場合には思考の間を埋める問いを作る。 もちろん、これは複数回ワークをやりながら調整していくこともある。

持ち帰ってほしいことの、自分が働く上で変えることを学ぶための問いを目的1とし、 マルクスの主張を学ぶためのものを目的2とする。

  • A.資本家・経営者の考え方を理解した上で労働者としての自分の働き方を考える(目的1)
  • B.資本主義へのマルクスの主張を理解する問い(目的2)
  • C.資本家・経営者の立場で考える(目的1の質を高めるため)
  • D.資本主義から実社会への影響を学ぶための問い(目的2の質を高めるため)
  • E.資本主義の構造を学ぶための問い(基礎/全ての事前知識)

問いを作る

問いの分類Dの問いを作るとすると、以下のようにある。 難しい理論の本だと、解説本が出ているのでそちらを参考にするのも良い。 池上さんの解説本では、日本の情勢や世界的な影響につなげて説明してくれているので、そのまま使える。 例えば、派遣社員が増えていることを資本主義の観点から理解をするなど。 こういった情報から、例えば「派遣社員の制度と資本主義の関係は?」と問いを作ることが出来る。 すこし飛躍しているとすると、派遣社員制度の特徴について一旦考えてもらって共有するなども良い。

問いの分類Eの問いを作るとすると、以下のようにある。 また、出てくる用語や内容から、関連するものを一緒に探すのも良い。 マルクスの唱えている価値の測り方で、「労働価値説」がある。 ここから、「労働価値説」以外の価値説を探すことで、「効用価値説」を見つけることができた。 また、そこから他の価値の計測の方法を探すと、経済学の受給曲線の理論を見つけることができた。 こういった情報から、素直に作るとすると「商品に対する価値の考え方には、どんなものがあるか」と作ることが出来る。

しかし、どんなものがあるかと聞いても、普段の考え方以外には、なかなか出てこないとも考えられる。 普段の考え方だと、受給曲線で考えることが多いであろうから、そこでストーリーを用意して、 効用価値説で考えてもらったり、労働価値説で考えてもらったりするきっかけを提供する。 そこから、普段の自分の価値の考え方と比較してもらうなどすると、ぞれぞれの違いに着目しやすい。

問いから考えることを検証する

自分の身の回りに入る人に協力してもらう、問いについて考えてもらうなどして、 自分の問いからどういったものが考えつくかを検証する。 想定通りに思いついていない場合には、考える材料が足りていない、材料に気づいていない場合があるので、 問いの文言を修正したり、事前の説明を増やしたり、先に別の問いを考えてもらうようにする。

問いの時間とセッション時間から使用する問いを選択する

問いを分類してリストアップしたところで、問についてかかる時間なども考慮する。 そして、実施するセッションで確実に終わらせたい所、進行次第でスキップするところ、 次回に回すところなどを決める。