社会的ジレンマまとめ前編

概要

社会心理学を用いて社会的ジレンマの紹介をしている書籍、社会的ジレンマ―「環境破壊」から「いじめ」までを読んで勉強になったので簡単にまとめる。 長かったので前半部分をこちらの以下に記す。

内容

社会的ジレンマの紹介

環境問題はなぜ起こるのか。

環境はみんなでつかうから、1人が頑張っても恩恵が少ない。 だから、環境配慮をする行動をみんなが取りづらい。

これは、割り勘でも同じようなことが起きる。 割り勘は全員で頼んだ物が全員で支払いをする。 なので、自分だけ高いものを頼んで食べても、その金額は全員で割られることになる。 だから、ついつい高いものをみんなが頼んで総支払額が増えるなど。 騒音、割り箸、紙の問題などなど。

これを、公共財問題という。(特に覚える必要はないが、検索して学ぶとき用)環境問題もこれに当たる。

社会的ジレンマの定義 飲み会を例にすると、安いものをみんなのためにと思って取る行動を協力行動、高いものを頼むことを非協力行動と呼ぶ。 飲み会だと、安いものを頼んだ方がいいという行動(協力行動)をとると、取らなかったときに比べて好ましくない結果になる。 詳しく定義すると、以下になる 1.1人1人が協力行動か非協力行動を取る。 2.1人1人にとっては、非協力行動を取る方が協力行動と取るよりも好ましい結果になる。 3.全員が非協力行動取ると誰にとっての望ましくない結果が生まれる。

<!— 受験勉強の分野で考えた例もあった。 学生が自分は他の人よりもいい学校に行きたい、他の人を出し抜こうと勉強をする。 大学の定員は有限なのに、いい学校に行こうとすると多く勉強をしないといけなくなる。 みんながいい学校に行こうとして勉強をし始めると、みんなが多くの勉強をしないといけなくなる。-->

社会的ジレンマ問題は、産業化以前に比べて大きくなった。2つ理由があり、1つは社会の流動性が上がったこと、2つ目は、社会の人口と生産力の飛躍的増大である。 1つ目の流動性に関して。過去の流動性のない時代(人が一生同じ集団で生活していたとき)には、人を助けて信頼されていないと、自分が困ったときに助けてもらえない。なので、共同体ではsy快適なジレンマを解消しておいたほうが得になる。しかし、複数の違った集団に属するようになると、非協力行動をとったときの評判が自分のクビを締める可能性が小さくて、得られる利益のほうが間接的な利益よりも大きくなるから。2つ目の人口と生産性の増加に関して。生産性と人口が増大すると労時に迷惑を掛け合う能力が増大した。生産性向上をもたらしたハードウェアの進歩に、人々の行動を調整したソフトウェアの進歩が追いついていないことも原因として上げられる。

社会的ジレンマの発生メカニズム

中国では社会的ジレンマの解決のために、思想教育を行ったが、うまくいかなかった。 みんなのことを考えて、怠けずに働くことが正しいと伝え続けたにもかかわらず。人々の心がけでは解決できないことが分かる。

自分の利益だけを考える利己主義者が社会的ジレンマにおいて協力をするかどうかは、 自分の行動が他人に影響を与えられるかどうかによる。 自分の行動により他の人が協力してくれるのであれば、協力コストより見返りのほうが大きいとき、利己主義者は協力してくれる。 自分自信の利益の事を考えて、表面的に他人のためになることをする「エビで鯛を釣る」行為が発生する。

囚人のジレンマを用いて、実験した結果が紹介されている。 囚人のジレンマを使う実験には2通りあり、何度も繰り返して選択する場合と、一度きりの場合である。 前者では、後者よりも協力行動をとりやすい。後者の場合は、「海老で鯛を釣る」行為が行われない。 そのため、後者の一度きりで協力する人は、他愛的な気持ち、社会的規範、両親などで行動している。

繰り返しある囚人のジレンマで協力するための条件は2つあって、 相互協力状態を作って長期的な利益を得られるようにすることが必要だと考えることと、 相手が自分の協力行動に付け込まないという安心感が必要である。

お互いに信頼できない人同士で、相互協力状態を作るには少なくとも一方が「応報戦略」を用いることが有効。 応報戦略は、相手が取った行動を次の回の自分が取る戦略。相手が(非)協力したら、次の回に自分も(非)協力する。 相手に親切にしているだけでは駄目で、協力行動を取ることが自分のためになることを理解させる必要がある。 ゲーム理論の研究科が集まった囚人のジレンマのAIゲームをやった所、応報戦略は最も優秀な水準だったくらい有用な戦略である。

進化心理学的な観点では、人間には社会的ジレンマを解決するための自動的な働きが組み込まれている。 信頼ゲームをゲーム理論の専門家と直感的に動いた学生で点数が高かったのは、後者であった。 そこから、直感の中には社会的ジレンマを解決に導くかしこさが埋め込まれているのではないかと考えている。 そのインパクトから、同じテーマの本を10年程度で書き直したことが紹介されていた。

社会的ジレンマに対する解決策としてのアメとムチ

地元民が利用するレストランと観光地が利用するレストランについて考えると、わかりやすい。 前者は、協力行動として美味しい料理を出して再度来店してもらわないと商売ができない。 しかし、後者は、同じ観光客が何度も来るわけではないので、協力行動をして美味しい料理を出さなくても、別のお客が来るので困らないのである。 海老で鯛を釣る原理は、3人以上になるのインパクトが薄まり限界になる。

集団が一定以上協力行動をしているときに協力し、非協力行動をしているときに非協力行動をする集団応報戦略を用いてみる方法もある。 相手を信頼できるかどうかが、協力行動をとれるか、非協力行動とるかに影響をお耐える最も重要な違いの一つ。

非協力的な人と、協力的な人について考える。 非協力な人は、他の人も非協力行動を取りやすい利己主義者だと考えているので常に非協力行動を取る。 協力行動を受けても、裏を書かれるのではないかと考えやすい。 そして、協力をする人に対して、利益を追求する能力がかけていると感じて、協力行動に漬け込んでくる。

協力的な人は、人は様々だと考えているので相手に応じて、人に応じて対応を変える。 自分が協力しても大丈夫だと思う人に協力する。 そして、協力をする人に対して、道徳的に優れた人だと感じるから。

社会的ジレンマを解決するためには、他人に対する信頼感を高める必要がある。 相互協力の重要性を認識していて、相手に付け込まれないか不安に感じている人に、協力することへの保証をすることで社会的ジレンマのかなりの部分が解決される。 「海老で鯛を釣る」利己主義者と、常に協力しない利己主義者がいる場合、公権力によって、安心の保証をする必要がある。 すなわち、公権力によって協力行動・非協力行動が生み出す損得勘定を変える必要がある。

協力行動・非協力行動が個人に与える影響と、集団に与える影響をまとめると「利得構造」と呼べる。 そこから、社会的ジレンマとは、個人にとっては非協力行動を選択するほうが良く、集団にとっては協力するほうが良い利得構造の状態といえる。 もっとも簡単に損得勘定を変える方法として上げられる「アメとムチ」を使って解決を考える。

アメとムチを使う場合にデメリットは大きく分けて2つある。監視コストと自発性の低下である。 監視コストは、アメとムチを与える対象を監視するためのコストである。 例えば、夜中にゴミを捨てる人を取り締まるには、誰かが夜通しゴミ捨て場を見張らなければならない。 集団が小さいときはコストが小さいが、集団が大きくなるに連れてコストが大きくなる。 それに加え、二次的なジレンマが発生する。監視をする自警団に対するジレンマである。 自警団に入らなくても、費用を負担しなくても、恩恵を受けられるなら負担したくないといった考えである。

自発性の低下についても2つの問題がある。 社会心理学用語で「帰属理論」と「内発的動機づけ」である。 内発的動機づけは、行動自体が楽しいと思っていたものに報酬をもらっていると報酬がなくなったときに行動をしなくなる問題である。 お絵かきをしている子供に報酬を与えたら、実験後に絵を書かなくなる話が有名である。 帰属理論では、他人が行動をしているのは、自らそうしているのではなく強制されていやいやさせられていると感じるようになる。 強制させられていると感じると、アメとムチなしでは協力しないだろうと考えて、信頼が低下する。

アメとムチは、使い方によっては自発的な協力で解決可能だった問題も、 解決することを難しくしてしまい、悪循環のサイクルになってしまうことも多い。