モティベーションをまなぶ12の理論 第1章 内発的動機づけを読んで学んだこと

モティベーションをまなぶ12の理論 第1章 内発的動機づけを読んで学んだこと

概要

心理学理論からやるき・モチベーションに関してまとめた書籍であるhttps://www.amazon.co.jp/dp/4772412492を読みました。 良い理論が多く紹介されていたので、調べる学び始める本としては良書だと思います。 今回は、第一章の内発的動機づけについて学んだことと感想を残します。

モティベーションをまなぶ12の理論

モティベーションをまなぶ12の理論

内容

報酬を元に行動をすることを、行動自体が手段になるときを外発的動機づけと言われ、 報酬がなくても行動すること、行動自体が目的になっているとき内発的動機づけと呼ばれる。

ネズミは、電気ショックの先に食料を置くと電気ショックを受けても取りに行くが、 それだけではなく、探索できる迷路を置いても電気ショックを受けても迷路で遊びに行く。 何の報酬もないのに、迷路を遊ぶためだけに行動することから、ネズミにも内発的動機が存在する。

人が環境と関わる際の情報処理過程に置いては、環境から受け取る新しい情報と 日常的に活躍して活用している既有の認識枠組み(認知標準)とのズレが興味を引き起こし、そのズレを解消プロセスによって学習が起こる

そのズレが小さすぎると刺激に接近しないし、大きすぎると刺激を回避することから、適度のズレがもとめられるという

心理的ズレが学習を引き起こすというこのような考え方を「認知的動機づけ」とよぶ これは、既存の知識と、得られた情報の間に不調和を整合的に理解しようとする動機づけである。

内発的動機づけは、単に楽しい体験ではない。その積極的な意義は質の高いパフォーマンスを生み出す動機づけ現状である点に見出すことが出来る

「質の高いやる気」を「エンゲージメント」と呼ぶ。 エンゲージメントは、持続的に努力するような「熱中した心理状態」。 エンゲージメントには、3つの側面があり、行動的エンゲージメント、感情的エンゲージメント、認知的エンゲージメントにわけられる。 行動的エンゲージメントは、どの程度、注意を向け、努力し、粘り強く取り組んでいるか。 感情的エンゲージメントは、どの程度、興味や楽しさといったポジティブな感情を伴っているか。 認知的エンゲージメントは、どの程度、物事を深く理解したり、ハイレベルの技能を身につけようとする意図を持ち、自分の活動に測定し、自己評価する問題解決プロセスとして取り組んでいるか。 これらを同時に発揮することでパフォーマンスが高められる。

外発的動機づけについて。 子供にご褒美をあげることで、やる気を無くすのか。 ご褒美をあげることで、ご褒美がなくなったときに行動しなくなることをアンダーマイニング効果と呼ぶ。 アンダーマイニング効果は、内発的動機づけを持っているものに対して、事前にご褒美をあげることを約束することで効果を発揮する。逆に言うと、事前に予告していなかったご褒美を事後にあげることは問題にならない。ご褒美目当てになることが問題である。

言語報酬の場合は、内発的動機づけを高めることがある。エンハンシング効果という。

ランク付けを強調する評価の仕方が、内発的動機づけや学習プロセスと成果に悪影響を及ぼす可能性がある。 「自我関与-課題関与説」で考える。 自我関与は、自分の能力があることを示すことに関心がある心理状態。 課題関与は、物事の熟達に関心が向けられている心理状態。 相対評価は、自我関与が高まってしまう。

このような「評価」をめぐる一連の研究知見は、むやみに「競争」や「ランク」を強調するのではなく、むしろ一人ひとりの「理解」や「上達」を大切に扱う環境やシステムが望ましいということを示唆している。

「やらせる-やらされる」関係の他律的な認識のコストを確認する実験。 2グループの大学生にパズルを教える教師役をさせる実験をしたところ、一方には到達点を要求し、他方にはパズルで学ぶことを促すように要求した。 結果として、前者は後者に比べて、命令調の発言や、生徒を非難する発言が多かった。そして、解き方を指示しすぎるため、生徒に選択の機会を与えず、生徒が自分でパズルに取り組んだり、解決に至ることが少なく、良い教え方ではなかった。

やる気の種類は3種類あり、タスク(課題)型やる気、エゴ(自我)型やる気、賞罰型やる気である。

タスク(課題)型やる気は、興味、意義付け、価値付けを伴い、エンゲージメントにつながる質の高いやる気につながる。 エゴ(自我)型やる気は、自我関与の自尊心を中核とした動機づけ。 賞罰型やる気は、行動を開始する契機になり、やる気の量を高めるが、エンゲージメントするどころか阻害することもある。

より深く知るための文献

知的好奇心 (中公新書 (318))

知的好奇心 (中公新書 (318))

報酬主義をこえて 〈新装版〉 (叢書・ウニベルシタス)

報酬主義をこえて 〈新装版〉 (叢書・ウニベルシタス)

感想

三宅先生の「教育心理学概論」でも何度も引用されて紹介されていた波多野先生・稲垣先生の本や論文も何度も引用されていて興味深い内容だった。 教育心理学概論を読んだ次のステップとして、波多野先生の著書を扱いたい。

認知的動機づけは、経験則と理論を結びつける素朴理論と関係が深いものではないか。 素朴理論から、理論に進めるときに教師がやることで効果的なものは、そのギャップの大きさを適度なものにすることではないか。具体的には、生徒の話を聞いて、差が大きいようであれば段階的な問いを用意したい。

教育工学で作られているシステムの中には、相対評価やランキングを用いることで学生の成績を伸ばすことを述べられたものも多い。過去から、実験を観察していたが学生が過度にランキングにこだわるため、本質的なものから遠ざかっている印象を受けていた。そのため、「自我関与-課題関与説」は非常に納得した。