信頼の構造 5章 まとめ

信頼の構造を勉強しているので、読んだ5章の内容を簡単にまとめる。

実験のやり方に関する主張

社会科学の分野で、文化による違いの実験をすることが多いが、アメリカと日本で比較実験をするのではなく、実験に差異をもたらす要因を実験者ごとに排除すればいいのではないか。 アメリカと日本では、人の信頼しやすさに差があるのであれば、信頼しやすさで人数構成比を同じにすれば、文化ごとの差は出ないはずだ。

実験の前提をかんたんに

実験は、人と取引を何度も行うときに、「この人と継続して取引したい」といった行動をどのくらい取るかである。 販売側と購入側に分かれて実験する。販売側は、購入側から巻き上げることが可能である。

信頼できる相手かどうかわからないときに、人はどういった行動を取るかの実験である。

実験からわかること

購入者


実験上、相手が騙してくる(社会的不確実性)が高い状況下において、人は同じ人と継続的に取引する(コミットメント)傾向にある。

これは、日本人とアメリカ人において違いはない。

相手が騙す世界である(社会的不確実性がある)だけで、継続取引していない部外者への信頼は低下する。特定の相手との間に継続取引(コミットメント形成)している程度が強いほど、部外者を信頼する程度が小さい。

他人との付き合いで酷い目にあう可能性が存在すると、それだけであまり付き合いのない(コミットメント形成していない)部外者が信頼できなくなってしまう。部外者に対する不信感が強くなる。

販売者

巻き上げる額(社会的不確実性)が大きくなると、巻き上げチャンスの利用率が低下する傾向にある。

社会的不確実性に直面したときに、相手と継続取引(コミットメント形成)を強めるのは、相手が騙してくるかどうか見破ることに鈍感な人(低信頼者)。

全般

社会的不確実性を伴う場合、お互いが人質を提供し合えば、社会的不確実性は大幅に減る。 法律や慣習、法律を実行する政府を作ることも社会的不果実性を減少させる、他にも、力や権力を身につける方法もある。

継続取引(コミットメント)する機会コストが大きければ、継続取引しないほうが有利になる。

実験結果


日本人とアメリカ人には、信頼性には差がないが、信頼には差がある。 日本人とアメリカ人は、公正行動する傾向に差はないが、他人が公正に行動するだろうという期待には、差がある。

これは、質問紙の実験出でている結果と一貫している。

質問師の結果のだろうせいを高めること、分配委任実験の有用性が確認できた。

実験の意味

実験室の実験結果を直接、社会に当てはめるのが目的ではない。 実験室で明らかにした理論を社会に当てはめる。 生ゴムの仲介人の関係に起きていることを、不確実性を低めるためにコミットメントを形成する、と抽象化することで、理論が当てはめられるようになる。

実験をする真の目的は、理論が正しいことを証明するためではなく、理論が間違っていることを証明するため。結果が理論と一致しなければ、その理論のどこかにまずい部分があることがわかる。一部の人が理論と一致した結果が得られていないなら、当てはまるタイプと当てはまらないタイプを理論が特定できてない。 1、2度の実験で一致する結果が得られたからといって、その理論の正しさが証明されたわけではない。

いろんなサンプルとつかって、実験して参加者に応じて結果が異なる場合に、異なる部分を区別していくことが、社会科学を実りあるものにしていく。

実験が目指す一般化は、結果そのものの一般化ではなく、理論の一般化。 理論の一般化とは、ある理論がどのような条件のもとで成り立ち、どのような条件のもとでは成り立たないか明確にすること。

ある1つの要因の影響以外を排除した状況を作れば、現実にはありえない状況とならざるを得ない。 結果そのものの一般化が可能な実験は、失敗した実験、要因の特定が不十分な実験。 巻き上げチャンスがあるときに、どのくらい頻繁に相手を搾取するかについて一般的な知識を身に着つけようとしているわけではない。

理論の一般化をするための方法は、いろんなサンプルを使って、いろんなやり方で同じ理論について検討すること。効率的に理論の一般化をするには、少しずつやり方やサンプリを変えた追試実験を重ねる。